【アドラー×教育】脱・競争原理! 協力原理型の学級運営のすすめ
はじめに
今回は「脱・競争原理! 協力原理のクラス運営のすすめ」と題して、他人と比べ合う競争的な思考・環境から他人は協力し合う仲間だという思考・環境へのシフトチェンジについて解説していきます。
突然ですが、皆さんはクラスの中で、子どもたちを競争させるのは好きですか?
計算プリントを行った時には早く解き終わった子を呼名する、
体育ではリーグ戦表をクラスに貼り出して、1位〇〇チーム、2位⬜︎⬜︎チームや賞状を渡すなど
教育現場で子どもたち同士を競わせている場面が数多くあると私自身感じています。
現に私も数年前までは、過度にはしていなかったという前置きは挟みますが、体育での順位付けやクイズ大会は〇〇班が優勝!といった競争を教育に取り入れていました。
しかし、今回はタイトルでもお分かりの通り、競争原理を教育の現場に持ち込むのは止めようという話です。
競争原理が多用される理由、なぜ競争原理がダメなのか、競争原理に代わる協力原理の良さとは、協力原理を取り入れる具体的なアクションプランという展開で解説していこうと思います。
常識へのアンチテーゼが常だったアドラーに習って、競争原理にまみれた教育界で1歩すすんだ協力原理を学級経営の基盤にしていきませんか。
それでは、いってみましょう!
競争原理について
競争原理が教育現場で多用される理由
まず始めに教育現場で競争原理が多用される理由から話していきます。
結論から言うと競争原理を行うことで「やる気が出る」に尽きると思います。
書初めをしたらクラスで数人に金賞、銀賞を選び、全校朝会で表彰・紹介をする。
持久走をしたら順位をつけ、〇〇くん、⬜︎分⬜︎秒 第⬜︎位という賞状を渡す。
クラスの体育ではリーグ戦を行い、最終的な順位で1位のチームを学級通信で紹介する。
良いことをしたらポイントやシールが貰え、その多さで遊び場所や給食のおかわりが優先的になるなど報酬がある。
こういった活動が皆さんの学校・学級でも行われていないでしょうか。
こういった活動を取り入れることで、金賞を取るために書写を一生懸命練習する!マラソン大会で1位を取るために朝からランニングに励む!といった意欲が掻き立てられる子が多くいるのも事実でしょう。
子どもたちに一生懸命に取り組んでもらいたいという思考から、安易な手段として上位の子に対して称賛や褒賞を与えるというのです。
しかし、こと学校教育に於いては競争原理というのは天津飯にかめはめ波を撃つかの如く行っていはいけない悪手なのです。
なぜ競争原理がダメなのか
では、なぜやる気も出て、子どもたちが意欲的に取り組むようになる競争原理がダメなのかという話をしていきます。
これにはエイムズの実験という実験の効果を知ってもらうの手っ取り早いです。
エイムズの実験とは、
2人1組になって学生に問題を解いてもらいます。そして問題を解き終わるごとに2人の成績が読み上げられます。
この時Aチームには、「成績が良かったほうが勝ち、勝った方にはご褒美をあげる」と伝えます。
Bチームには「勝ち負けはなし、2人には研究に協力してくれたお礼としてごほうびをあげる」と伝えました。
そして自分たちの成績を振り返ってもらったところ、
Aチームは自分の運や能力と結びつけた子が多かった。
Bチームは自分の努力と結びつけた子が多かった、という実験でした。
ここから分かることは、他者との競争は過信を生みやすく、自分との競争は意欲を生みやすいというものです。
これは小学校でも同じことが言えるのではないでしょうか。
集団の中で1位を目指そう、目指そうとすればするほど、周りのクラスメイトは自分の地位を脅かす敵という意識が強くなっていくはずです。
ここからは私自身の体験談ですが、小学4年生の時にクラスで毎日100マス計算のタイムアタックを行っていました。私はKUMONや学習塾を掛け持ちしており、計算の速さには自信がありました。
しかし、どうしても100マス計算のスピードで勝てないAさんが居たんです。そのAさんは塾などにも特に通っていない普通の女の子でした。他の教科の成績もそこそこという感じなのに計算の処理スピードだけがチート級に高い、学習の能力を計算力に全振りしていたような子でした。
私のクラスの100マス計算は、終わった瞬間に「終わりました!」と大きな声をあげて先生に伝え、タイマーのタイムを書き込むというやり方だったのですが、Aさんの「終わりました!」という声を聞くたびに私の心は掻き乱され、焦りや嫉妬や敗北感、ライバル心から目の前の計算にどんどん集中できなくなりました。
私は、Aさんが不正をしているんじゃないかと疑って、1回分の100マス計算を諦めてAさんの解き方を観察してた時すらあります。(結果、Aさんは本当に計算がめちゃくちゃ速いだけの真面目な子でした。疑ってごめんなさい。)
そして、Aさんに負けたくないというライバル心がMAXになった私が最終的に取った手段は、ずるでした。そうです、適当に答えを書いて、とにかく早く終わらせてAさんよりも早く「終わった!」と言ってAさんより優位に立ちたかったのです。
結果Aさんよりも早く終わることはできました。
しかし私の目の前にあったのは、正当しているものがほとんどない、ただ適当に数字を埋めただけの計算用紙でした。
100マス計算の本来の目的の「早く正確に計算を解く」は見事に瓦解しました。
これはもしかしたら極端な例かもしれませんが、競争原理を突き詰めた先にあるのはこのような環境でしょう。
競争原理の中では他者とは自分の地位を脅かす敵であり、絶対に勝てない相手は嫉妬、妬みの対象となり、自分より格下の相手には間違った優越感や見下すような態度を取るようになり、自分と同等の相手には何が何でも負けたくないという歪んだライバル心をもつように変化していくのです。
あなたはクラスの中がこのような状況・環境になっても良いでしょうか。
おそらく回答はNOのはずです。そのためには一刻も早くクラスの中から競争原理を取り除きましょう。
協力原理について
協力原理とは
競争原理のデメリット、危うさについては理解できたでしょうか。
ここからは競争原理を捨てた方が取り入れていくべき考えについて紹介していきます。
結論から言うと取り入れるべきは「協力原理」です。
協力原理とは一言で言えば「自分には能力・居場所があり、周りの人は協力していく仲間である」という意識のことです。
協力原理の中では、100マス計算にしろ、体育にしろ、クイズ大会にしろ、周りの友達はあくまでマラソンでいうところの伴走者のような役割を果たすのです。
100マス計算をしている時にふと周りを見ると、自分と同じように一心不乱に計算に取り組んでいる友達が目に映る。それを見て、また自分の問題に取り組み始める。
50m走のタイムを計測したら、クラスの〇〇は足が速いんだな、でも俺だって俺なりに一生懸命走ったんだしOKでしょ、と自分を受け入れる。
何かの取り組みをすれば一定の子は、上手に、早く、強く、なろうと努力しているはずです。
そこに教師が無理に価値付けをしなくて良いのです。
スポーツであれば単純にそのスポーツが上達することに重きを置きましょう。
書き初めであれば、自分の字と向き合って納得の行く字が書けたかに重きを置きましょう。
クイズであれば目の前クイズが解けたか解けなかったのかに重きを置きましょう。
そこに競争心を煽るような褒賞やライバル心を助長するような声かけは必要ないのです。
教師が計算が早い子、スポーツが得意な子、字が上手な子、などに対して個人的に勇気付けを行うことを否定する気はありません。
ただし、それを集団の中で過度に称賛する必要はありません。過剰に教師や周りから称賛されたり持ち上げられたりすると、行き着く先は傲慢や過度なプレッシャーへと繋がっていくのです。
子どもたちに何度でも協力原理の大切さを説いてあげてください。
あなたは誰と比べるわけでもなく、ありのままの自分で良いんだよと実感させてあげてください。
周りの友達は一緒に成長していくための仲間なんだと教えてあげてください。
これからのアクションプラン
ではこれからあなたはクラスにどんなことを行っていけば「協力原理」を手に入れられるかの具体的なアクションプランをお伝えします。
まず1つ目は【順位付けを行わない】です。
具体的には、〇〇コンテスト、⬜︎⬜︎大会、△△グランプリなどを行わず、1位、優勝、金賞などの上位の子達への苛烈な褒賞を廃止するのです。
100歩譲って○○コンテストなどを実施することは良くても順位付けや褒賞だけでも止めましょう。
細かいところでは、隙間時間に行うクイズなどで、班対抗にして黒板にそれぞれの班の正当数を正の字などで板書して競わせていませんか?それもだめです。
2つ目は【競う相手は過去の自分であるという認識を強くもたせる】です。
100マス計算を行うときは、昨日は85秒で終わったから、今日は84秒を目指そうといった具合に周りの子と比べるのではなく、過去の自分のタイムと比べるのです。
勝ち負けの存在するスポーツでも同じです。
リレーを行うなら体育で初めてリレーをした時のタイムと練習を重ねて単元の最後に行った時のタイムを比べるのです。
6チームでリレーを行っていたとすると、競争原理であれば1位や2位のチームしか喜べないものが協力原理であれば6チームとも自分たちの成長を実感でき、喜ぶことも可能なのです。
もっとシビアな対戦型のスポーツでも、試合には負けたけど、前回よりはたくさんシュートが入るようになったね、パス回しが上手くなってきたよねという考え方がもてるように声をかけてあげましょう。
そうすれば、目の前のチームは敵ではなく、相手が居るからこそ試合が成り立つというスポーツマンシップや感謝の気持ちをもつことだって可能になるのです。
順位付けを行わない、過去の自分と比べる、この2つ主軸にして競争原理のクラスから協力原理のクラスへと導いてきましょう。
終わりに
「脱・競争原理! 協力原理型の学級運営のすすめ」いかがだったでしょうか。
アドーラ心理学は褒めることも叱ることも、承認欲なども完全否定しており、すぐに実践するのが難しいものが多いと実感していますが、今回の内容は比較的すぐに実践ができるのではないでしょうか。
世の中を見渡せばオリンピックからM1グランプリから人気の企業TOP100、美味しいラーメン屋Best3など競争原理が数多く見受けられますし、これら全てを否定するつもりはありません。
そんな競争原理に溢れている世の中にあって他者からの評価や順位などは関係ない、自分は自分のやるべきこと、幸せに向かって進んでいこうという1本の芯の通った子が育っていって欲しいと願うばかりです。
それでは今後もスマートな教員を目指していきましょう!
では、また。次の記事で Thank you