今回は絶対に買うべき絵本シリーズの第1弾として、オニガシマラソンという絵本について解説していきたいと思います。
というのもこの絵本はちょっと面白さのレベルが並大抵ではないのです。
以前1年生を担任している妻からオススメの絵本を聞かれて、この絵本を紹介して読み聞かせしたところ、なんと貸し出しが禁止になったのです。
理由は簡単で、このオニガシマラソンが人気過ぎて次に読ませて欲しいという子が殺到し、喧嘩になるからということでした。
そこで、試しに3年生の私のクラスでも読み聞かせしたところ、同じように次に貸して欲しい子が殺到して、読んでている子に「次貸してくれる」と聞くと「いいけど、〇〇くんと〇〇くんと〇〇くんと⬜︎⬜︎さんと⬜︎⬜︎さんと〇〇くんの後ね」と果てしない予約リストが存在しているようです。
なぜ数ある絵本の中でもこのオニガシマラソンは子ども心を掴むのかについて、以下で解説していきます!
オニガシマラソンとは
オニガシマラソンのあらすじ、概要
様々な妖怪、モンスターが鬼ヶ島でマラソンするというもの。
作者はおしりたんていで一躍有名になったトロルさん、おしりたんてい同様に子どもが好きそうな仕掛け、演出、カラフルな色使い、セリフなどが散りばめられており、トロルさんの描く絵本が子どもに人気なことも納得の一冊です。
特徴の1つ目「セリフ」
この絵本ではマラソンをしている妖怪達のセリフはほとんどなく、マラソンを中継しているアナウンサー役や解説役の妖怪の実況や解説が物語の本文になっています。
読み聞かせをする際にはぜひ、野球やサッカーのスポーツ中継を思い出しながら、アナウンサーや解説者になりきったつもりで読んでみてください!
きっと子どもたちも本当のスポーツ中継を見ているかのように目を輝かせて熱中しているはずです。
特徴の2つ目「登場人物」
この絵本には総勢50体の妖怪やモンスターが登場します。中にはろくろ首や魔女などの有名なものから、ラミア(ヘビの魔女)やチョンチョン(耳で飛ぶ顔?)など大人でも知らないようなマイナーなものに加えて、バナナの皮や毒キノコなど選手と呼べないようなものまで実にバラエティー豊かなキャラクターが参加しています。
そしてオニガシマラソンでは、参加者の妖怪やモンスターの特徴や個性が絶妙にマラソンに生かされていて面白いです。例えば、序盤でドラゴンがマラソンで優位に立っているのですが、ページを捲ると解説の人が「おぉっとドラゴン選手どうした、お腹を痛めているぞ、これはどくきのこ選手を食べてしまったからだー!」というアナウンスが入るのですが、ページを戻ってみると、確かにドラゴンが毒キノコ選手を食べているシーンが細かいですが描かれています。
またゾンビに噛まれた選手や魔女の魔法をかけられた選手が次のページでは、ゾンビ化していたり、魔法で若返ったりしているなど、登場人物同士の絡みが随所に散りばめられています。
そしてそんな登場人物同士の特徴を発揮している場面が解説されている以外のところでもページいっぱいに大展開されているのです。
そうなってくると、次のページからは解説されている部分はもちろんのこと、挿絵の細かいところまで何か発見や面白いところはないかと探し始めます。
そうすると自分だけの発見があったり、自分の見つけたところが次のページで紹介されていたりと絵本を何倍も堪能することができます。
特徴の3つ目「ゴールの瞬間」
いよいよ、オニガシマラソンのピーク、トップ選手がゴールをする瞬間にも妖怪やモンスターならではの特徴が生かされていて、大人も手に汗握る、そしてあっと驚くようなゴールが待っています。ですから、読み聞かせする前には必ず自分1人で読むことをおすすめします。
もしスキャンして読み聞かせすることが可能であれば、ゴールの瞬間のページには全部で4つの絵が描かれているので、一気に見せるのではなく、1枚1枚をスキャンして、コマ送りのように読み聞かせしてみてください。
ちなみに読み聞かせ前に登場選手一覧を子どもに見せて、1位を予想させてみると、ただ読み聞かせを聞くだけでなく、自分の予想した選手を応援するようになるので、「みんなの応援してる選手はまだ残ってる?」なんて聞くと、より読み聞かせに熱中するようになります。
特徴の4つ目「伏線回収」
さぁ、以上の特徴だけでも面白さや読み返したくなる仕掛けが満載のオニガシマラソンですが、1番読み返したくなる仕掛けは物語の最後の最後に仕掛けられています。
様々な苦難やアクシデントを乗り越えて終わったマラソン大会、それでも無事に1位、2位、3位が決まり、このままハッピーエンドかと思いきや、ここで登場するのがオニガシマラソンという題名にぴったりの桃太郎その人です。
閉会式を行なっている妖怪達の前に颯爽と洗われた桃太郎は妖怪達を成敗しようと勝負を挑むのです。そして始まる桃太郎VS鬼の大将による一騎討ち!この対決の結末も相当に面白そうですが、残念ながら絵本はここまでとなっています。
しかし、それだけなら桃太郎という新しい登場人物が登場しただけですが、解説者から「桃太郎は実は序盤から鬼ヶ島に向かってきていたのです!」とう衝撃のセリフが飛び出すのです。
そうです、序盤、中盤であれだけ、細かいところまで見渡したはずのページの中に桃太郎一向が遥かかなたから船に乗り、1ページ毎にだんだんとその影を大きくしながら鬼ヶ島に近付き、上陸するまでのコマがちゃんと描かれているのです。
これには私自身も本屋さんで読みながら脳に衝撃が走ったのをよく覚えています。
それまで、なんか妖怪達がたくさん出てきて、展開も面白そうだし買ってみようかな〜程度の購買意欲だったのが、この桃太郎の登場で「ええぇぇぇーー!!」「すごーい!本当だ、本当に小さくだけど桃太郎達が近づいてきてる!」と驚いている子どもの様子が脳内再現が終わった頃には手元に買ったばかりのオニガシマラソンが握られていました。
最後に
以上、オニガシマラソンいかがでしたでしょうか。
まとめると、妖怪、モンスター×マラソンという子どもたちに人気の物×有名なスポーツを掛け合わせ、個性豊かな登場人物たちの特徴を見事にまとめ上げていると思います。
また初見では100%外れるであろう1位の選手や桃太郎の登場などの意外性、ページを捲るごとに面白いのはもちろん、ページを戻るごとにも面白いという唯一無二の面白さを誇っている絵本だと私は思っています。
私は一ヶ月に30冊程度の絵本を読み、独自に10点満点で評価を付けるという活動をTwitterで行なっています。そして、そこで8点以上の評価がついた厳選された絵本を購入し、学級文庫に置いています。
しかし、これがなかなかハードルが高く、1ヶ月に1冊見つかるかどうかというレベルでした。しかし、今回紹介したオニガシマラソンは文句なく10点満点です!!
クラスに私物の学級文庫がある方、読み聞かせが好きな方、これかた子どもたちに読書の習慣が身について欲しいと思っている全ての方に強く強く推薦する一冊です。
それでは今後も、スマートな教員を目指していきましょう!
では、また。次の記事で Thank you