1冊で2度美味しい⁉︎ 必ず読み返したくなる絵本3選
突然ですが、皆さんはどんなジャンルの小説や映画が好きでしょうか。
恋愛? SF? 冒険? ホラー? ミステリー? 小説や映画にはその他にも様々なジャンルや種類がありますが、私が最も好きなのはズバリ「ミステリー」です。
そしてその中でも「エスター」や「シックスセンス」に代表されるような最後にどんでん返しの伏線回収があって、映画を見終わってから事実を確認すると序盤のあの出来事はそういう事だったのか!と思わず声に出してしまうような映画が大好きです。
そしてこんな読み返したくなるような仕掛けや秘密がある絵本が存在するんです。
映画を見返そうとなると早送りなどを駆使しても数十分はかかるでしょう。
でも絵本ならたったの数分で読み返すことができます。
読み聞かせの最後にこのお話の仕掛けや秘密が何だったのか伝えるorクイズにすれば、間違いなく子どもたちは絵本に飛びついて、秘密が何だったのか確認したり、考えたりすることでしょう。
何となく本に目を通しているだけの受動的な読書から、まさに血眼といった表現がピッタリくるような能動的な読書体験をぜひ、クラスでも体験させてあげてください!
それではいってみましょう!
1.かいじゅうたちのいるところ
1冊目の絵本は世界中で古くから愛されている「かいじゅうたちのいるところ」モーリス・センダック作です。
この絵本は1963年創刊、全世界で2000万部以上売れている、絵本界の金字塔のような作品です。
あらすじ
いたずらのお仕置きに部屋に閉じ込められたマックスはいつの間にか冒険に巻き込まれ、船に乗って旅をするに、航海のすえマックスはかいじゅうの国に到着する。
そこでマックスは、かいじゅうを従え王様となり、かいじゅうとの日々を楽しく過ごすが、やがて家が恋しくなり、また船に乗り今度は家を目指して航海を始めます。
ポイント
この絵本のポイントは絵の大きさです。
少し、文字では表現しづらい部分がありますので、頭の中でよく想像してお読みください。
そして、話を分かりやすくするために、このお話を始め、中①、中②、終わりの4段階に分けたいと思います。
まず始めは、お話の冒頭、主人公のマックスが閉じ込められて、冒険に旅立つ場面です。
ここでは見開きのページに対して、挿絵の部分が小さく描かれており、ぺーじを捲るごとに挿絵が徐々に大きく描かれていきます。
次に中①では、マックスが航海しながら、かいじゅうの島を目指し、無事に辿り着く場面です。
ここでは挿絵が大きく描かれ、島に到着する時には、見開きの半分以上が挿絵で占められています。
次に中③では、マックスがかいじゅうたちの王となり、踊りや宴などで楽しく過ごす場面です。
ここでは、見開きのページの8〜9割が挿絵になっており、文字の部分がページ下部のほんの一部分だけです。
そして、数ページに至っては挿絵のみのページもあります。
最後に終わりでは、マックスがかいじゅうの島を後にし、自分の家へ向かう場面です。
ここでは始めと逆でページを捲るごとに挿し絵が小さくなっていきます。
このように、始め、中①、中②、終わりにかけて、挿絵がだんだん大きく描かれ、物語の山場を過ぎるとだんだんと挿絵が小さく描かれるのが「かいじゅうたちのいるところ」のポイントです。
ここからは私の仮説ですが、このお話は主人公マックスの夢の中で航海したり、かいじゅうたちの王様になってみたりして、最後には夢から覚める所謂夢オチのお話だと考えれるので、マックスの夢の深度を挿絵で表しているのではないかと思います。
この絵本のポイントはクイズ形式にするのがおすすめです。
ネタバラシをせずに読み聞かせをした後に、「実は、この絵本にはある秘密があったんだけど分かったかな?分かった人はこっそり先生に教えてね。」なんて声かけをすると読み聞かせ後も子どもたちは必死になってかいじゅうたちのいるところを読み返して、絵本に隠された秘密を探していました。
休み時間になると子どもが「先生、分かったよ、このかいじゅうの表情がね〜」なんて声をかけにきたら、優しく「そこも確かに面白いポイントだね。でも秘密は他にあるんだ。」と教えてあげましょう。
2.オニガシマラソン
2冊目は様々な妖怪、モンスターが鬼ヶ島でマラソンするという何とも子どもが好きそうな内容の絵本です。
作者はおしりたんていで一躍有名になったトロルさん、おしりたんてい同様に子どもが好きそうな仕掛け、演出、カラフルな色使い、セリフなどが散りばめられており、トロルさんの描く絵本が子どもに人気なことも納得の一冊です。
ポイント
鬼ヶ島に集められた妖怪、モンスター達がマラソンをし、一斉にゴールを目指すという物語です。面白いところが、マラソンをしている妖怪達のセリフはほとんどなく、マラソンを中継しているアナウンサー役の妖怪の実況や解説が物語の本文になっている点です。そして参加者の妖怪のモンスターの特徴や個性が絶妙にマラソンに生かされていてるところが読み返したくなるポイントです。
例えば、序盤でドラゴンが優位に立っているのですが、ページを捲ると解説の人が「おぉっとドラゴン選手どうした、お腹を痛めているぞ、これはドクテングダケを食べてしまったからだー!」というアナウンスが入るのですが、ページを戻ってみると、確かにドラゴンがドクテングダケを食べているシーンが細かいですが描かれています。
そして、そんな展開が続くと、次のページからは解説されている部分はもちろんのこと、挿絵の細かいところまで何か発見や面白いところはないかと探し始めます。
そうすると自分だけの発見があったり、自分の見つけたところが次のページで紹介されていたりと絵本を何倍も堪能することができます。
そして、オニガシマラソンのピーク、トップ選手がゴールをする瞬間にも妖怪やモンスターならではの特徴が生かされていて、大人も手に汗握る、そしてあっと驚くようなゴールが待っていますので、読み聞かせする前には必ず自分1人で読むことをおすすめします。
さぁ、これだけでも読み返したくなる仕掛けが満載のオニガシマラソンですが、1番読み返したくなる仕掛けは物語の最後最後に仕掛けられています。
様々な苦難やアクシデントを乗り越えて終わったマラソン大会、それでも無事に1位、2位、3位が決まり、このままハッピーエンドかと思いきや、ここで登場するのが、かの有名な登場人物、桃太郎その人です。
閉会式を行なっている妖怪達の前に颯爽と洗われた桃太郎は妖怪達を成敗しようと勝負を挑むのです。
そしてさらに解説者からの「桃太郎は実は序盤から鬼ヶ島に向かってきていたのです!」という衝撃のセリフが飛び出すのです。
そうです、序盤、中盤でああれだけ、細かいところまで見渡したはずのページの中に桃太郎が遥かかなたから船に乗り、1ページ毎にだんだんとその影を大きくしながら鬼ヶ島に近付き、上陸するまでのコマがちゃんと描かれているのです。
これには私自身も本屋さんで読みながら脳に衝撃が走ったのをよく覚えています。
それまで、なんか妖怪達がたくさん出てきて、展開も面白そう出し買ってみようかな〜程度の購買意欲だったのが、この桃太郎の登場で「ええぇぇぇーー!!」「すごーい!本当だ、本当に小さくだけど桃太郎達が近づいてきてる!」と驚いている子どもの様子が脳内再現ができ終わった頃には手元に買ったばかりのオニガシマラソンが握られていました。
オニガシマラソンについては内容はほぼ同じですが、以下のブログで絶対に買うべき絵本シリーズとして、さらに詳しく魅力を解説していますので、ぜひ読んでみてください。
今回は絶対に買うべき絵本シリーズの第1弾として、オニガシマラソンという絵本について解説していきたいと思います。 というのもこの絵本はちょっと面白さのレベルが並大抵ではないのです。 以前1年生を担任し[…]
3.ZOOM
3冊目は、ハンガリー出身の絵本作家バンニャイさんが書かれた「ZOOM」という作品です。
まず始めにハンガリーの絵本を知っているってだけで少しかっこ良くないですか?
「何か面白い絵本知ってる?」って聞かれた時に「知ってるよ!この絵本なんかハンガリー出身の人が書いてる絵本なんだけどさ、」なんて始めるだけでちょっと絵本通になった気分も味わえますよね。
また、「ZOOM」という言葉もこのコロナ禍の状況でリモート会議やテレワークが普及した関係で大人はもちろん多くの子どもにとっても浸透した言葉ですね。
しかし、この絵本のタイトルの「ZOOM」はカメラでいう拡大・縮小機能のZOOMです。
そして、もう一つのこの絵本のもう一つの特徴は文字が一切ないことです。
なので、全世界の子どもから大人まで老若男女が楽しめる絵本となっています。
私も学校の図書室でふと見つけて数ページ読んでからは、ページを捲る手が止まらず、
行儀が悪いこと承知で立ち読みの状態で全ページを読んで、その足で貸出作業を行いました。
・あらすじ
この絵本にあらすじ、ストーリなどは無いのでこの項目は割愛します。
ポイント
この絵本はZOOMという題名通り、ページを捲る毎に挿絵の一部にズームされたり、ズームアウトされたりしていく絵本です。
表紙から背表紙までは鶏の鶏冠(とさか)から宇宙に向かってのズームアウト、
逆に背表紙から表紙へは宇宙から鶏の鶏冠(とさか)へズームされていきます。
ページを捲る毎に挿絵のどこにズームされたのかorズームアウトされたのかページを戻ったり、進めたりしながら読むと面白いです。
また世界観も手紙を持っている人の切手の絵柄の人が見ているテレビの中のバスの広告の船の中の雑誌を持っている男の人のページに写っている〜と無限に世界が広がっていてる感じも想像的で興味を惹かれるポイントです。
終わりに
「1冊で2度美味しい⁉︎ 必ず読み返したくなる絵本3選」いかがでしたでしょうか。
冒頭でも書きましたが、私は子どもたちにもっと能動的に絵本を読んで欲しい考えている人です。
勿論今回紹介したような作者が意図的に興味をもってもらおうと仕掛けているところもそうですが、子どもたち1人1人が絵本の中に何回でも読み返したくなるような面白さを見つけて欲しいと思います。
今回紹介した絵本をきっかけに子どもたちの能動的読書の一助になっていれば幸いです。
そして、ここで紹介した絵本だけでなく本当に面白い絵本というのは何回読んでも面白いし、世代や国境を越えて愛される物なんだと思います。
教師が絵本の世界と子どもたちを繋ぐ伝道師のような役割を担っている考えると、
面白い絵本を知っているということは大きなアドバンテージとも言えます。
これからも鋭いアンテナを張り巡らせて、子どもたちに絵本の面白さを紹介してあげてください。
それでは今後もスマートな教員を目指していきましょう!
では、また。次の記事で Thank you